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「石は語る!〜歴史的建造物をつくった石材を探る〜」を開催しました。

投稿日:2022/11/04

このイベントは終了しました。

たまきさんサロンスタッフです。
10月22日(土)のサロン講座は、東北大学理学部名誉教授の蟹澤聰史(かにさわ さとし)先生と、青葉山・八木山フットパスの会でもおなじみの東北大学施設部キャンパスデザイン室専門職員の内山隆弘(うちやま たかひろ)氏のお二人を講師としてお迎えして、建造物のご案内と解説をお願いしました。
今回の講座では、明治時代以降に建てられた歴史的建造物が数多く残されている東北大学片平キャンパス内およびその周辺を巡り、建造物に用いられている石材の種類や産地、その由来などについて、実際に現物を見ながら解説していただきました。
まず、見学を始める前に、片平キャンパスの歴史的建造物で使用されている石材見本や石材の鑑定法について教えていただきました。

【片平キャンパスでよく用いられた石材】

 石材の鑑定は、文献や肉眼による方法が主流でしたが、最近では「帯磁率計」を使った測定という科学的手法が主流になってきているとのことです。本来は岩石の一部を切断し、厚さ0.03oの薄片(プレパラート)にして偏光顕微鏡で観察する方法がもっとも正確ですが、非破壊で文化財の石質を鑑定するには不適当です。
 建造物に使われる石材には、耐久性のある硬くて緻密な石や柔らかく加工しやすい石が、用途によって選ばれています。どんな種類の石で、どこの産地からどのようにして運ばれて来たのかを探っていくことによって、当時の流通経路や石材需要などがわかります。

 片平キャンパスの形成には、明治24年に第二高等中学校(後の第二高等学校)の開校以来、多くの教育機関や学部が大学に組み込まれたり増設されてきた歴史があります。それに伴って明治から昭和初期(戦前)にかけて建造された歴史的建造物が、キャンパス内には数多くまとまって残されています。
 平成29年に片平キャンパス内の旧第二高等学校書庫など5棟が「登録有形文化財」として登録されました。さらに令和3年には、東北大学正門など8件の建造物を登録有形文化財として新たに登録するよう文部科学大臣に答申されています。今回の講座ではそれらの歴史的建造物に用いられた建材である石材に注目してみました。
 片平キャンパスに残る歴史的建造物に多く用いられている石材の種類は、火山岩、凝灰岩、溶結凝灰岩、花崗岩などです。それぞれの産地としては、火山岩は仙台の地場で採石される「三滝玄武岩」、凝灰岩は白沢カルデラの噴出物である「秋保石(湯本層凝灰岩)」、溶結凝灰岩は福島・栃木県境に広く分布する白河火砕流堆積物由来の「白河石・芦野石」、花崗岩は、県外産の「稲田石」(茨城県)や「万成石(まんなりいし)」(岡山県)などと考えられます。最近では外国産の花崗岩類が多用されています。

 明治期の当初、石材は基礎などの構造部材として使われていましたが、大正期に入ると、大きな建築物には鉄筋コンクリートが用いられるようになり、石材は構造材としてよりも表面仕上げ材として貼り付けて用いられることが多くなっていったということです。


【旧仙台医学専門学校(東北大学魯迅の階段教室)】 登録有形文化財 基壇部は煉瓦の上に火山岩(三滝玄武岩と推定)が積まれています。このような基礎は仙台の明治期洋風建築の特徴的なもので、明治期から同じ場所に立ち続けているこの建物では、その基礎が残っているのです。 同じ医専の建物でも「魯迅の階段教室」と呼ばれる方の建物は、昭和初期に移築されているためコンクリートの基礎に変わっています。


【旧第二高等学校書庫(明治期)現在は「文化財収蔵庫」】 登録有形文化財 基壇部と壁の装飾帯、外部階段部には、仙台医学専門学校の基礎と同様に、火山岩(三滝玄武岩と推定)が使われています。


【外部階段】



【旧工学部本館(現在は工学部機械および電気教室)】 基壇部には花崗岩が使われています。うっすらとピンク色をしており、昭和初期にこのような色の石が流行したことを物語っています。この石の産地は分かりませんが、同時期、仙台城の伊達政宗公騎馬像の台座に、同じくピンク色をした万成石(岡山市産)が用いられています。

【帯磁率計を使って調べる蟹澤先生(左)と内山さん(右)】

片平キャンパスの南側部分は、明治39年にこの地に設立された官立の仙台高等工業学校(SKK)の旧敷地になります。戦後の学制改革で東北大学に合併されています。

【SKK建築学科アーチ門(昭和初期)現在は東北大学電気通信研究所)】 腰壁には凝灰岩が使われています。この凝灰岩は、アパタイトという鉱物の微量元素組成の分析により、秋保石であることが分かっています。大正3年に秋保から長町までのから馬車軌道が引かれ、さらに同14年には電気軌道となって、大量の石材が運ばれました。

片平丁通りを挟んで向かい側の東北学院大学の「専門部校舎」や「ラーハウザー礼拝堂」の外壁にも、同じ秋保石が使われているということです。



【SKK旧正門(大正期)】 溶結凝灰岩が使われています。溶結凝灰岩とは、火砕流などの堆積物が、自らの熱で溶けて押しつぶされ、硬く緻密になったものです。仙台では、白河火砕流堆積物を起源とする石(白河石など)が多くみられます。この石は、東北本線の前身である日本鉄道の工事で多く用いられるようになりました。

【旧第二高等学校正門(明治期)】 門の柱頭部には火山岩(三滝玄武岩と推定)が使われています。レンガと火山岩の組み合わせはいかにも明治の特徴と言えます。



【第二高等学校記念碑(昭和44年)】花崗岩(稲田石)で造られています。稲田石は水戸線の稲田駅ができた明治後期から盛んに利用されるようになりました。現在広瀬川にかかる大橋にも使われています。



【大正14年に造られた現在の大学正門】 全体が花崗岩(稲田石と推定)で造られています。第二高等学校記念碑の稲田石と比べてみると、全く同じ表情であることが分かります。


【東北帝大付属図書館(大正期)現在は「東北大学史料館」】 登録有形文化財 玄関周り、外部階段は溶結凝灰岩、腰壁は凝灰岩(秋保石と推定)で造られています。



【片平丁通りに面した石垣(三滝玄武岩)】 仙台城の石垣と同じ石が使われています。片平丁に並んでいた上級の武家屋敷の石垣がそのまま使われていると言われています。
 最後に、旧理学部だった現在の金属材料研究所の敷地に入ります。

【旧理学部生物学科(大正期)現在は「放送大学」】

 基壇部には花崗岩が使われています。(現在は防水のための吹付塗装がされ、建材を直接見ることはできません)これは建築家中島泉次郎氏による建築物で、明治末から大正にかけて流行った「セセッション」風の洋風建築の非常にモダンで凝ったデザイン性が、その外観から感じられます。中島泉次郎氏は一番町にあった「鶴屋洋菓子店」(大正元年建築、二階には仙台初のカフェと言われる「カフェ・クレーン」併設)でも、セセッション風の設計を行っています。

 今回のサロン講座では、「建造物に用いられた石材」という視点から、戦災や都市開発の波をくぐり抜けて片平キャンパスに現存している建造物を通して、見えて来るものを探ってみました。

 仙台市内の歴史的建造物も、時代ごとに違った石材を用いて造られていて、それらの石材を調べることによって当時の様子がうかがえるということを教えていただきました。また、こうした石材の数々は、仙台周辺をはじめとした日本各地の火山活動や地殻形成という太古の歴史をも知ることができる貴重な手がかりになっているということです。

 それだけに、すでに「登録有形文化財」として登録され保全されている建造物に限らず、人知れず埋もれたまま消滅していってしまうような歴史的建造物にも目を向けて調査し、貴重な史料としての保存に向けた取り組みも大切であると感じました。

 今回は、限られた短い時間での「キャンパス内歴史的建造物巡り」でしたが、岩石の歴史と、それを使った建造物の歴史を知ることができました。

蟹沢先生、内山さん、そして今回の講座にご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

参考文献
「東北大学片平キャンパスにおける歴史的建造物の石材に関する研究」東北大学総合学術博物館研究紀要 第19号, 2020 (内山隆弘・蟹澤聰史)  
「令和4年10月22日 たまきさんサロン講座「石は語る!〜歴史的建造物をつくった石材を探る〜」(蟹澤聰史・内山隆弘)


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