浅沼宏先生の「エネルギー・環境問題の現状を考える」環境出前講座より

浅沼先生の出前講座

本日は、仙台市環境出前講座で、仙台市立北中山小学校にきています。
仙台市環境出前講座ネットワークより、東北大学大学院環境科学研究科 浅沼宏先生の講座「エネルギー・環境問題の現状を考える」をお届けします。


浅沼宏先生

浅沼先生といえば、12月に開催されました、せんだいE-Actionの講座で、エネルギーに関し解り易い講義をしてくださった先生ですね。
今日はたっぷり1時間半もお話しが聞けるということで、楽しみにしていたんです。それでは、少々お話しを、アチコチつまみながらになりますが、僕が気になってメモしていたポイントを追って写真レポートです。


温暖化の影響

始めの話題は地球温暖化です。私たちは温帯にある日本に住んでいるので、大きな変化を感じにくいかもしれません。
例えば、昨日の日中の気温は15度を越えていたけど、今日は5度にならなかったとか。日々の温度差が大きいので、変化に気がつき難いんです。
ところが赤道地域や北極に近いところなどは気温の上昇が目に見えて解ることが多く、例えば極の氷が溶けてしまっているとか、熱帯ではやたらと乾燥する日が多いなど、変化が目に見えて体感できます。
先生は、年に一回、3月ごろにインドネシアに行く用事があるのですが、ここ数年は寒気と雨期の差が少ないようです。
特にオーストラリアの内陸部の砂漠などのように、いままで雨が降らなかった場所にも大粒の雨が降っているところがあります。そのように気候が啓著な地域では、すでに多くの影響が出ています。


メモをとってます

そして日本に目をむけると。。。。このまま温暖化が進行すると、西日本では気温が上がりすぎて米の収穫が2割ほど減ってしまうそうです。
そして東北は、やはり水不足などが起こり易くなって、日本全体が稲作に向かない地域になってしまう可能性があるとか。。
日本はもともと食料の自給率が低いので、大変なことになりますね。


家庭部門が突出

では、日本のエネルギーの使用量を、1990年を基にして、どれぐらい使用量が増えているかを比較したグラフが左のものになります。
これを見ると、産業部門はなんと、全体で3%近く減っています。確かに工場などでは節電に気をつけましょう!との合い言葉で、灯りを間引いて点灯したり、工夫をしていますよね。
それに比べて使用量が1.4倍と一気に増えている部門があります。なんと家庭部門です。
ここで先生のおっしゃっていたキーワードがひとつ。

「エコの悲劇」

もうすっかり世の中にエコ家電も増えてきて、電気の使用量などは減っていいはずなのですが、一般の人は「エコ家電に替えたのだから、少しぐらい使ってもいいだろう。。。」と、家庭の中にテレビを2台3台と設置したり、今より大きめの冷蔵庫を選択したり、エコカーに乗り換えたのだから燃費が良くなったと車に乗る機会を増やしてしまったり、全く意味がないですね。


自動車の影響も大きい

こちら、平均的な家庭から排出される二酸化炭素の割合を、円グラフにまとめたものです。
自動車の利用は3割近くも占めているのですね。ところがこれは、あくまで平均的な話。地方になると車はひと家庭に2台や3台ある家もあります。すると、30%は50%になったり75%になったりと。。。します。エコが消費の免罪符になっているのですね。

僕は、別のところで似たような話を聞いたことがあります。ある識者の言葉です。
「車の先端は、もっと刺々しく、人を突き刺すような形でいい。」なぜ?
車は毎年どんどん安全になっているのに、死者数は一向に減らない。“安全な車に乗っている”という感覚が、運転を麻痺させているのが良くないなら、危険な車にしたほうが「よっぽど死者が減る。」だそうです。
人間って、楽なものにはすぐに慣れてしまう生き物なんですね。


二酸化炭素排出量

そこで電気を作るとき、発電で排出される二酸化炭素を表したグラフを見てみます。
グラフの横棒には設置時の発生する二酸化炭素と、燃料を燃やした時に発生する二酸化炭素が合算されています。
上から3本は、石炭・石油・LNG(液化天然ガス)など、基本的に何かを燃やすことで得られるエネルギーです。
石炭は燃焼させると膨大な二酸化炭素を発生させます。まさに石炭は炭素の固まりだからです。
LNGが二酸化炭素の発生が少ないのは、水素が含まれているせいで、燃焼すると水を発生させるからです。

そして水力は。。。とても優秀なのです。
水力発電所では、古いところでは稼働100年近い仙台の三居沢発電所などがありますが、基本的に動作する時に水で冷やされるので機械が傷み難いそうで、ほとんど部品交換をしないで動かすことができるそうです。
ただ。。。問題は、川には水利権があるので、もう殆どの河川で新規の発電所作りは不可能だそうです。

太陽光発電は、発電パネルを作る時に大量の半導体が必要になるので、エネルギーを沢山使うそうです。。。


太陽光発電

では、太陽光発電を知ってみましょう。
太陽光の光のエネルギー量は、東北は緯度が高いので少々弱いですが、高知県辺りにいくと、1平方メートルの範囲に、1kW/hのエネルギーが降り注いでいます。
このエネルギーは、だいたい電子レンジを1台、一時間動かした時に使う電気の量だそうで、凄まじいですね。
ですが、実際には太陽光を電気に替える効率は10〜15%と、そこまで高くはないので、せいぜい1平方メートルでパソコンを一台動かすぐらいだそうです。
どれくらい???僕のMacBook Airでは45ワットですね。まぁ〜そのぐらいは動くそうです。


風力発電

続いて風力発電。
こちらはエネルギーの変換効率は優秀で40%ほどだそうです。
ただし、さっきと同じ1kW/hを出すには風速12メートル/秒は必要。安定的に使うには、常時6メートル/秒の風が吹くことが必要だそうで、宮城県内ではこのぐらいの風が吹く場所は蔵王連峰の山頂と、船形山の山頂、栗駒山の山頂ぐらいで、ぜんぶ国立公園のなかですね。。。そして確かに強い風の場所でした。


小水力発電

さて、続いて中小水力発電。
こちらは設置してしまえば非常に優秀なんだけど、まずは水利権で設置が難しくなっている。そして一定の落差が必要だから、いきなり七北田川で発電というわけにはいかない。そこで注目は、用水路だそうです。
用水路は川ではないので水利権は設置した農業団体が持っています。ですので許可がとり易く、小さなものを作ると10〜20軒ぐらいの電気はまかなってくれるそうです。
問題は、そんなに沢山が作れないことか。。。


メモをとってます

ということで、様々なエネルギーを見てきましたが、どれも一長一短で、良いところもあるのだけど実現にハードルもあります。


唐桑半島の取組み

そしてこちらは面白い話。
唐桑半島には多くの植林が植わっています。
この木の生えている地区を30等分にして、順番に燃料にして燃やし植林していくと、樹々が更新され、地域の燃料としてエネルギーが取り出せるついでに林業に携わる雇用も生まれるので、試算したことがあるそうです。


樹々の話

これは僕も今日始めて聞いた話です。
バイオマスエネルギー、特に木は、植わっているものを燃やしても、また木が成長する過程で二酸化炭素を固定化するので排出量にカウントされないということですが、樹々が二酸化炭素を取り込んで、成長できるのは植えてから40年ぐらいのあいだのことで、その後は人為的に入れ換えないと二酸化炭素の固定にはつながらないそうです。

そこで唐桑半島で試算した方法だと、上手にエネルギーを取り出し電気代などの節約になるかな?っと思いましたら。。。出来上がったお湯などのエネルギーを運ぶ術が無い。
これではせっかくのエネルギーも活かされませんね。


バイオエタノール

似たようなカーボンニュートラルのエネルギー源にバイオエタノールもあります。
これは、さとうきびやトウモロコシ、日本ではお米などから発酵の力でエタノールを作り出し、精製して自動車の燃料などに置き換えようと言うものです。オーストラリアでも見かけましたね。

ところがこれも、お米から取り出すのに今イチコストが高い。
トウモロコシは、一時期家畜や人の食用のものと競合して価格が上がってみたり。。。どうも世界中で、バイオエタノールで成功しているのは、オレンジからの転作で上手に経済の流れに乗せたブラジルぐらいだそうです。

そこで先生に「なんでブラジルだけうまくいったのですか?」と聞いてみたところ、どうやらずいぶん昔からアルコールへの移行の取組みをしていたようです。


家庭のエネルギーを1とすると

左の図は、実際の家庭のエネルギー利用を1として、様々なものの電気使用量を調べてみましたところ、自動販売機の電気使用量が、家一軒と同じ。コンビニは30軒分と、驚く数字が出てきました。


太陽光パネルで発電すると

そして、今の社会のエネルギー使用量を、全てクリーンな太陽光パネルで補うとすると、どのぐらいの面積のパネルが必要になるのでしょう?
答えは、図の黄色い部分の面積。宮城県の面積の4分の3だそうです。ちょっと無理なのかな?って思いましたら、以前の講座の高校生が「やります!」と言ったそうで。心強いですね。



けっきょく、この分です。

じゃぁ、私たちの暮らし。
今の暮らしを維持しようとするから、アチコチに無理が出るのではないでしょうか?
例えば話題の原発を使わない暮らしを選択するとしたら、いったいどの程度まで時間を遡り、電気の使用量が少なかった時代に戻ればいいのかと言うと、1989年頃でした。
これは驚き!1989年は、そんなに前ではないし、そんなに不便ではなかったですよ。

電気の使用量と暮らしが直結しているかどうかは解りませんが、40年前に比べると日本の国全体の生産力は2.7倍になったそうです。
でも、暮らしは40年前よりは幸せになったかと言うと、データでは今の人の方が幸せに感じていないそうです。
そこで、先生は「豊かさの次にあるものを考えよう」と、勧めてらっしゃいます。


自給率

そこで、大問題のグラフです。日本の県別の食料と、電力の自給率のグラフです。
東北6県では宮城だけが食料の自給率が100%を下回っています。秋田などは電力も作っているし、食料も豊富に作っていて優秀ですね。
そこで、いちばん左下側を見てみると、東京と大阪が並んで入っています。全て他地域に任せて暮らしているのですね。
こういう他地域におぶさる暮らしは、需給のバランスを狂わせ、他地域に負担を強いて見たりと、もう考え直す時が来ているのではないだろうか?と思われます。


質疑応答

ということで、エネルギーを取り巻く私たちの暮らしを、様々なデータをもとに、細かく解説していただきました。

ちなみに先生は、ハイブリッド車にも懐疑的でした。というのはハイブリット車は製造時に膨大なエネルギーが必要なので、バッテリー分の製造エネルギーを燃費の良さで解消するまでで、走行で5万キロ分。さらに高額な車両の販売価格を燃費の差額で解消するのは。。。一般的な人で年間6万円ぐらいは燃料代が安くなると考えても、ちょっと無理じゃあないかと。

そこで僕んち。走行4万キロの中古車の「インサイトを安く買ってきまして、使ってます。」と話しましたら、その方法があったか!という感じで褒めてもらいました。
初期投資が低いと、利益が出易いんです。プリウスもインサイトも去年あたりから2回目の車検の時期なので、質のいい中古車が安く出てますよ!
だけど先生。「エコカー買う人って、新車で買っちゃう人が大半なんですよね。自動車屋さんは販売が上手だよね。」
本当。その通りだと思います。


意見が飛び交います

さて、質疑応答の時間です。
とても多くの意見が飛び交ったのですが、一番引っかかったのはこれ。

「宮城県と山形県には多くの温泉がありますが、地熱発電の可能性は無いのですか?」
地熱は先生の専門分野でもあったんですね。そして気になる点ですが、まずは地熱は地面の下にあるので「見えない」というのが問題だそうです。
掘ってみないと実用的なのかが解らない。
そしてさらに問題なのは、地熱発電で利用する熱源は、地下2キロほどのところまで穴を掘るそうです。ところが温泉は100メートルほどしか井戸を掘らない。
この深さの差が、実際の温泉にどう作用するかは?ちゃんと解っていないそうです。
わかればもっと、温泉業者さんなどから地熱利用の同意が得られ易くなるのでしょうね。


皆さん集中してます

そして、日本の住宅について、一言。
国連のレポートにもあったそうなんですが、日本の住居の構造は、小さい家で効率が良さそうなのにダイニングキッチンという構造がよくないそうです。
キッチンと居間が同居しているので、熱が排気とともに逃げていってしまうそうです。この二つは分けて作るのが理想的だそうです。

ドイツなどには「ゼロエネルギーハウス」などと言うものがあるそうで、人間が出す熱だけでも家が暖かくなるそうです。
ただ、その家は壁の厚みが40センチもあるので、なかなか難しいですね。


感謝の花束

ということで、大変長くなってしまいましたが、浅沼先生の講座レポートでした。
昨年の講座の時に、様々なキーワードを聞くことができたので、いつかしっかりお話しを聞いてみたいと思っていました。たいへん勉強になりました。有り難うございます。
ちなみに先生は、なにかこのような研究を書籍にされていないのかと伺いましたが、まだ市販の本までは無いそうです。
いつかしっかり読んでみたいと思います。早く世の中に出ないかなぁ〜。


北中山小学校 杉田校長

最後にちょっとオマケ。
北中山小学校には、太陽光発電パネルが設置され、非常時のバッテリーなどに使われるそうです。
今朝の新聞にも掲載されたとのことで、記事を探したんだけど。。。見つからなかったんで、スミマセン。
写真は北中山小学校 杉田校長先生でした。

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