ジャレド・ダイヤモンド「文明崩壊(下巻)」

たま〜にやっていますが、今回は書評です。
読了するまでの間にずいぶん時間がかかってしまったけど、さすがに2冊だけ読んでいた訳ではないですよ。村上龍とか、高橋源一郎とか原発問題とか、隙間にいろいろ読んだのは、この手の本を読むとしばらくは、脳みそのリセットが必要になるからなんです。それぐらい重くて、しっかり読み込むには力も必要だったりします。

上巻はグリーンランドに移住したノルウェー人やイースター島のように孤立した文明(小さな集団でも文明です)が、如何にして環境要因で滅んでしまうのか?人口負荷によって暮らしを維持できなくなった悲惨な例も紹介されており、私たちの暮らしは安定した環境の中でこそ維持が可能で、採取と復活のバランスが崩れた土地の末期は言葉にできません。
もともとその地に根ざしていた集団は変わること無く暮らせているので、「何故?生き方を学ぼうとしなかったのだろう?」など、読んでいて先進(と思い込んでいる)文明の姿勢の、何ともやりきれない結果を俯瞰し解説します。

そして下巻。驚いたことに事例として日本も紹介されています。(文明崩壊と日本って?って思いました。)

日本は文明の維持に、木材にとても強く頼っていた。
樹々を切り倒すことで家屋需要をまかない、暖房用に利用もした。それが原因で、樹木の再生サイクルが崩壊しかけるのだ。

これは他の記事で読んだのだが、現代の日本の山林は、江戸〜明治までの収奪の影響から植生が大きく復活しており、未だかつて無いほどの森林の濃さなのだそう。日本の植物は、切り倒されても復帰できるほど気温と降水に恵まれていたのでしょう。
ところが江戸時代に、一度は乱伐で日本の山林は崩壊の危機にあった、それを救ったのは当時の将軍だとか。幕府が勅令で山林の切り出しに制限をかけたことで、日本の森は守られたのです。

ここが、守られなかったらどうなるのか?
乱伐の進んだ例としてハイチやルワンダの例が出てきますが、最も恐ろしい事態は「表土の流出」です。

私たちは、地表は不変のものと考えがちです。とくに表土に関しては、雨が降って川が濁っても、晴れれば災厄のことは忘れてしまいます。ところが地表の植栽が失われ、継続して表土が流れるようになると、植生が復活することがなかなかできず、あとに残るのはやせた土地だけとなる。そのような痩せた土地では作物もろくに育たないので、人口を支えることが出来なくなります。

その事態を徳川幕府は直轄の命令によって回避しました。日本全土で木の切出し数を台帳を作ることで厳重に管理したのです。
森林の保全に当時の権力者が命令を出し、同じように木々の伐採を中止させた例が世界中に幾つかあります。これらは時の指導者が「個人の経験」や「直感」によって判断した例が多い。(驚いたことに、孤島で植生に打撃を与えるブタの飼育を禁止した島まであります。)

そしてここからが問題。私たち日本は、原材料を輸入し様々な商品を製造して輸出しています。
植林業が経済的にうまくまわらなくなった日本は、他国から原材料となる原木を輸入し、言い換えてみると外国へ樹木の乱伐を輸出しているとも言えます。(日本の森林化率は国土の76%もあるのに!伐採を継続している国は30%以下です。)
樹々は、直接切り倒して販売した利益に比べると、加工する利益のほうが10倍以上も高額となります。
この事実は「樹々を輸出」するより「樹を加工して輸出」するほうがはるかに地元の労働者に利益があり、樹々の輸出をしている非公認の材木商(ほとんど窃盗団に近い)の収益に大きな影響が出すことを意味します。そのために出来るだけ現在の違法伐採に近い輸出を継続する原動力ともなります。こんなバランスの上で、木々の輸出が行われているのです。

樹々を含めた、地面の持つ栄養素は文明維持の基本を成すもので、私たち(日本人)は意識せずに他の文明を崩壊に向かわせているという事実に衝撃を受けました。

また、他の紹介事例としては。。。
スペイン産の野うさぎを、ただ故郷に似せたかったと言う理由で移植し、草原を含む広大な表土を失わせてしまったオーストラリア。

人口爆発から食料事情が悪化し、部族間の内戦にまで進んでしまったルワンダ。

私たちの住む地球(文明)は、人口の側面では崩壊の直前にいることが良くわかり、中国のとった一人っ子政策は、人口のバランスは崩れてしまうが、ひょっとすると最も効果の高い環境対策であった可能性も高い。

特にこの本を読んで強く思うのは、環境は人間の手で変えてしまうと、短期間で自然に再生できる土地と戻らない土地がある。そして、その修復期間を見極めようとしても、人間の視点では短時間の判断が優先になりがちで、全く正しい判断が出来ないと言うことでした。

ちょっと長い本ですが、これはとてもお勧めの本です。

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