鳥海山 ヒーローに会いに行く。

あそこに登るのか。。。
『鳥海山のレースで自転車に乗れる人がいないから、出てくれる〜?』
カヤックをやってる友人から突然にかかってきた電話で、とりあえず今年一番最後になるであろうレースが決まった。

鳥海山のお膝元の酒田市の港で4キロカヤックを漕ぎ、水からあがったら自転車で距離21キロ/標高1100メートルまで登り、最後は足で山頂の2236メートルを目指すという、まぁ〜とんでもないレースがあることはウワサでは聞いていた。
でもそれが、身近な友人から誘いの電話となると一気に現実のものとして浮かび上がってくるのだ。

すみません。時々たまきさんブログは、アウトドアに走ります。それも今日のは超過酷なアウトドア編です。

高速道路から見上げる鳥海山。
ふもとにどんどん近づいているから、高さがハンパでないのが良くわかる。
富士山は確かに高い山だ。でもあれは、途中までは車で登っている。
だいたい日本の高山は、そのほとんどが内陸部にあるから登山口もとても高所にある。
日本で最も難しい山として知られている劔岳だって、室堂から登れば標高差は500メートル。
『あのてっぺんまで登るのか〜。』
さらに山頂部には岩で出来た壁のような傾斜がついている。
『誰だよ。あんなのに出ようって言い出したのは。』

言い出しっぺは、宮城では有名なカヤックツアー&関連ビジネスをしているマリンプランニング宮城の東さん。みんなに大将と呼ばれている人物だけど、なぜか当日は所用で休み。モチベーションは下がりっぱなし。
なので、東大将の家来のようなチーム員一同でレース会場へ移動です。

もともとの企画では『カヤック/自転車/登山』の各パートを一人づつ継ぐはずだったのに、わざわざクラス変更をして、全員で海から山頂を目指すことに。。。。機材車には、登山道具に自転車と装備一式。そしてルーフにはカヤックが人数分積まれている。

普段はこれらのカテゴリーはひとつでも充分に競技になる。だのに一日に3種類もやるのか!
しかもウワサでは、北は北海道の大雪、南は山陰の大山。国内五カ所で開催されるこのレース。鳥海山が一番きついらしい。

鳥海山 SEA TO SUMMIT 2012

このレース。仙台にも直営店があるアウトドア用品のモンベルがお抱えでサポートしてまして、珍しいのは出場者全員が、ブリーフィングの前に環境セミナーに出席する義務があること。そして今日の講師は!
なんと、僕がアウトドアへと舵を切る切っ掛けを作った、海洋ジャーナリストで東京海洋大学講師、パリダカールラリー8回出場の内田正洋さんじゃないですか!
モータースポーツ時代から、この人の活躍には興味があって、ず〜っと著作は読まさせていただいてます。


まん中が内田キャプテン

この内田さん。海洋緑化協会という団体を主催していまして、日本の海洋環境を海側の視点から大変に危惧され、海洋の浄化への取り組みや、シーカヤックを使った学生への海洋教育など、ほんとうに様々な活動をしています。
僕らは海のことを知っているようで実は全くわかっていません。宇宙開発は探査機もずいぶん飛んで、地球周辺のことは少しづつ解ってきましたが、この地球上にある広大な海洋のことって、本当はさっぱり解っていないんですよね。


環境セミナーです。

内田さん。まず第一に『環境とは何か?わかりますか?』と、講座の第一声を切り出してきました。たまきさんサイトにも大きく関係しますね。

環境を人それぞれ、いろいろ定義していますが、辞書で調べるとすぐ解ります。
環境とは『四囲の外界。周囲の事物。人間 または生物をとりまき、それと相互作用を及ぼし合うものとして見た外界。』と引くことができます。
つまり人間の活動圏のさらに外界をさす。環境教育もwilderness learningとして、荒野を生き抜く術とすれば、簡単に理解できるのですよ。

なるほど。人間の生活圏の外側を理解すれば、僕らが暮らしている地域が人間によってどの程度影響を受けているか?わかるというものです。
僕たちは自分で思っている以上に、人間の活動する世界に引きこもって、自分達専用の基準(グローバルでない視点)を作っているのかもしれませんね。さすがは様々な世界各地を見てきた人です。

今は日本の海辺の『磯焼け』現象に取り組んでいらっしゃるそうで、講義の内容も海洋への、ごくごく微量の鉄分の供給が海のバクテリアや微生物を増やすことになり、最終的に磯が沢山の生物のすむ健康な環境に変わるお話しをされていました。(この環境も、人間の活動圏の外ですね。そういえば。)
なんでも三浦半島の、ご自宅の前の砂浜がほんの一年でまったく無くなってしまったとか。日本の磯は、今、大変な危機的状況にあるそうです。

そしてこの鉄分の仮説は検証の途中なので、まだ確定したとは言えないそうです。
ただ、漁師さんなど海に関わる方々が経験的に知っていたことを、大学などで改めて確認している最中だそうです。
例として出てきた話では、大戦中に沈んだ戦艦の周辺は、後々素晴らしい漁場になったとか。。。これ、飛行機じゃダメだったそうです。飛行機はジュラルミンですから。そして鉄橋の下なども良い魚場になっているそうです。漁師さんは経験で知っているのです。
そして他にも色々と興味深いお話しはあったのですが、さすがに聞きかじったことをそのまま掲載するわけにはいかないので。。。是非とも海洋緑化協会と内田さんの名前は憶えておいたほうがいいですよ。

ということで、本当に20年ぶりに内田さんにお会いできて、僕も感激でした。
相変わらずパワフルな人だったなぁ〜。これだけで鳥海にやってきた意味がある。


スタート前ミーティング

そして忘れてはいけない。こちらが本題の鳥海レースは、翌朝5時に港に集合でした。
耐久系レースはスタート前に大量の炭水化物を摂取する必要があるのですが、なんとスタート準備の忙しい午前4時に、前を向いていられないほどの土砂降りの雨が降り注ぎまして、『ほんとうに今日、こんな天気で山に向かうのか??』って、心が折れそうになりました。
それでも主催者の顧問の山岳連盟はOKサインを出したそうで、スタートの5時半の10分前にようやく開催宣言が出ました。


マリンプランニング宮城チーム

さぁ、我らがマリンプランニング宮城チーム。名前のとおりシーカヤックを中心としたメンバーの集まりなんで、海抜0メートル以上は活動の場ではない。大丈夫なのか???


カヤックスタート

ここからは競技中なので、写真はぶれぶれ、構図もいい加減ですけど、ご容赦ください。
そして我がチームは、さすがFRP艇のシーカヤック軍団。あっという間に集団から抜け出し、トップを快走中です。
僕ら4艇はトップ集団の、さらに先頭を切ってカヤックステージ4キロを終えました。
でも、第一ステージが終わって標高はまだ0メートルのまま。。。トホホ。


そしてバイク

そして哀しいかな我がチームは、自転車に乗るのは僕ともう一人だけ。。。
颯爽とトップで抜け出してったチームメイトは5分後に足の止まったヨレヨレ状態を僕に抜き返されました。
この時点で僕はどうやら4位ぐらいを疾走中。
メーターの数字もいいですよ〜。登り坂なのに時速29キロ。本当は写真を撮る直前までは36キロで漕いでましたよ。


これだけのメーター
これ、つづら折れの登り坂でのヒトコマ。
耐久系だとこれだけの計器をたよりに走ります。
スピードメーターに距離計。心臓の拍動を測る計器に自転車のペダルの回転計。さらに時計と高度計に、GPSナビです。
特にGPSナビは、初見の道を走る時に、今後200メートルのペダルの加減を決める時、大変に役立つ道具です。


あそこから来たわけ。

バイクステージは、どうやら先頭から4〜5台目で終了した模様。
あわててシューズを履き替え、ストックを持って山ステージに移動です。
ここからは。。。登り1100メートル。

ってことで、登り坂の途中から見た下界の景色。あの彼方の港から走ってきた訳ですね。


雨雲がかぶる登山道

天気は、急速に様相を変えているようです。
強い風が吹き付けていて、雲もこの高度では流れの速い霧となって尾根を越えて行きます。
だけどその風が生暖かい。何だか変だぞ?


ゴールの神社。

ほんとうに登りの写真が少なくてゴメンなさい。
なんと僕と中盤から競っていた選手は。。。ソロ出場2位に入賞ということがあとでわかった。
後ろから追いついてきた時にヤバいと思いまして、必死に逃げていたんですよね。
そしたら少し傾いた平らな石で足を滑らし、不意に足から力が抜けた瞬間に右ふくらはぎが痙攣を起こしまして。
っで、そのまま延々と逃げ続けたのですが、途中で競うカテゴリーが違うんじゃんって気がついて、先行してもらったんだけど。
僕ってチームで出ていても全種目走っているんだから、ソロで出てたらあわや2位だったってこと???
ということで、こちらがゴール地点の鳥海山山頂2236メートルでござざいます。


ゴール後の写真。
総合9位でした。
ゴール後に写真を撮ってもらいました。
でも。。。僕らがゴール後もぜんぜん人が登ってきませんでして。。。それほど一般の人には厳しいレースだったんですね。
でも僕のタイムが4時間27分で、トップは3時間48分。もはや人間ではないな。


下山中。
さぁ下山。
もう、全体力を使い果たしてまして、ゆっくりと歩きました。全く足に力が入りません。なので登り2時間下り3時間半と言うていたらく。。。
下りの途中でゼッケン番号101番。モンベル社長と内田さんのご一行とすれ違いました。
あのヘビースモーカーで大酒飲みだった内田さんが山に登ってるなんて!時代も変わったもんだ。


まだまだ登る人も

まだまだ延々と参加者は頂上を目指します。
そうなんですよ。自分の限界に挑むことこそが冒険なんですよ。
この時間になると若い人、年とった人、男性女性。太った人、足をひきづっている人、無駄に荷物をいっぱい背負った人、めんどくさいことは人任せにしてのんびり歩いてる人。
とにかく様々な人が山頂を目指しているんです。
きっとこの先には、今までになかった自分があるのだろう。未知の領域に一歩足を踏み出すというのは、他の人にとってはどうでもいい価値で、自分だけが満足できれば、それでいいんです。


雪渓。ぞくぞく人があがってくる。
さすが高緯度の鳥海山。
下界が35度越えの日々が続いたというのに、雪渓がまだ残っています。
参加者も、このあたりになると完走が目的だからノンビリ記念写真撮って雪遊びです。

登りのとき、『そこの雪渓、滑りますよ!』
って教わった場所に石が置いてあったので、足をかけたら下が凍っていた。
凍った場所の目印なんか置くから、かえって勘違いする。って思ったら、やっぱり僕の前にも一人転んでいて犠牲者二名。
帰りに見たら、バッテンがされていました。


この絶景。

帰りがけに振り返った鳥海山の吹浦口の絶壁。
なんて緑が濃くて、急峻なのでしょう!


自然に出来た段々滝
地中の岩盤の層にあわせて、段々の滝が自然に出来上がっています。
僕もいろいろ景色を観てきましたが、こんなに小さな滝壺が段々になって斜面に貼り付いた山肌は見たことが無いです。見事な景色ですね。


人工物が一切ない滝。

この大きな谷間には、ダムどころか整備された道も、人工物は全く見当たりません。
素晴らしい景観が残っているのですね。
鳥海山、恐るべしです。こんどはレースではなく、じっくり時間をかけて登りにきたいですね。


そして表彰式。

そして、レースが終わって表彰式です。
主催団体NPO法人元気王国の佐藤さんから挨拶です。
今回は2チームを除いて、全員完走したとか。素晴らしいですね。


芋焼酎をいただいた。
そして。。。ソロ3位入賞だと地元特産の高級ハム詰め合せセットがもらえたと知ってガッカリしてた僕には、抽選会で焼酎が当たりました。
耕作放棄地で作った芋で作った芋焼酎だそうです。嬉しいな〜。


そして!特賞の一個下の景品は、我がチームへ!
そしてそして、またまた当選。
本日の目玉商品のゴアテックスジャケットは!僕らのチームに当たった!!!
チームリーダーが着ているジャケット、ウン万円もするそうです。日本ゴアテックス様、ありがとうございます。
このジャケットは、今日のレースで僕に次いで2番目に頑張った人がもらってきました。
一番頑張った、ぼくは?
い〜んです。僕は自分用に超軽量ジャケットを既に持ってますから。
譲り合いの心が、チームを和やかにするんですよ。大切ですね。


これが景品の最高賞!
そして本日の、本当の目玉賞品は、シーカヤックでした。
内田さんがプレゼンターとなり、酒田市役所チームがもらっていきました。
当選した皆さんは、会場内ではず〜っと舐めるようにして、カヤックを見続けていたそうです。
ステージ上では大喜びで!これを励みにシーカヤックを始めるそうです。
東北の日本海側はシーカヤックがあまり盛んでないと、セミナーの最中にも話題にあがっていたんですよね。なんだか全てが素晴らしい展開となったレースでした。

来年はソロで出よう!って決めましたけど、世の中そんなに甘くない。
来年3年目のこのレースには、日本中からもっと強豪が集まってくるだろう。いい目標が出来たので、また一年、トレーニングに励めます。
今日、延々続く登り坂で、苦しいなぁ〜って思った人には、自分の一歩前を行く理想の自分、ヒーローが見えているんですよ。
だから僕らは大会に集まってくるんでしょうね。

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