川には魅力がたくさん! ~川の環境と川釣りの基本を知ろう~【サロン講座】

たまきさんサロンスタッフです。
7月26日(日)に、宮城教育大学 棟方有宗准教授をお迎えして「川には魅力がたくさん! ~川の環境と川釣りの基本を知ろう~」と題したサロン講座を開催しました。

川が好き、魚が好き、釣りが好きという先生の原点からお話しが始まりました。

東京都多摩の出身の棟方先生は、小学生(8歳)の頃、近所の多摩川にオイカワを釣りにお父さんに連れられて行ったことがきっかけで釣り好きになり、小・中・高校と通して、ひたすら釣りにのめり込む日々を送ったのだそうです。

17歳の時に図書館で『回遊魚の生物学』という本と出会い、18歳で魚の研究者を志したということでした。

大学院の時には、日光の研究所で大型のマスの研究を始められ、先生が釣る魚も巨大になっていきます。アメリカのオレゴン州に留学されていた時に、初めてキングサーモンを釣り上げ、この時はイクラ三昧の日々を経験したそうです。

30歳で宮城教育大学に奉職し、サケ・マスなどサケ科魚類の研究の第一人者として現在ご活躍の棟方先生ですが、先生の特徴は釣りのエキスパートでもあるということだと思います。生物の生態を調査・研究する上で、実際に現地に足を運んで対象を捕獲観察することは、とても重要な意味を持っています。

今日は、そんな棟方先生に釣りについて教えていただきます。

私たちが住む仙台の広瀬川は、名取川の支流で一級河川です。
源流部から名取川に合流するまで、全長45kmの中規模河川となります。
では、広瀬川には何種類くらいの魚が棲んでいるのでしょうか?

正解は、32科72種類くらいです。

海外の数千kmにも及ぶ流域を持つ大きな川にくらべて、わずか45kmの広瀬川ですが、場所によって棲む魚の種類も違っています。
広瀬川の上流、中流、下流の写真を見ながら考えてみましょう。

上流部にあたる奥新川付近の写真を見ると、「川幅が狭い」「水がきれい」「浅い」「苔がはえている」「木陰を流れている」「大きな岩がある」ことがわかります。

上流域を好むヤマメやイワナの生息域です。

次に、上流から少し下った場所の写真です。「広い河原がある」「大きな岩がなくなる」「丸石が多い」「日当たりがいい」「川底がヌルヌルしている」「水量が多く流れが速い」ことなどがわかります。

中流の「運搬域」と呼ばれる流域で、カジカなどが生息しています。

さらに下った中流域の鹿落坂から霊屋橋を撮影した写真です。

「市街地の中を流れる」「石が少ない」「砂や泥によって中州が形成される」「水際に植物が多い」様子がわかります。このような河川状態は「堆積域」と呼ばれます。

中流域に生息する魚は、アユやウグイやアブラハヤなどです。

アユはサケ科、ウグイやアブラハヤはコイの仲間です。
見分ける方法は、背びれの後ろにもうひとつ「アブラひれ」というひれがある点です。

最後は、名取川との合流点である郡山付近の下流部の写真です。
「川岸に土や泥が堆積している」「水が濁っている」「水深があり底が見えない」「流れがゆるやか」などの特徴が見てとれます。
上流の水にくらべて透明度が低いのは、石が削られ粒子となって水に溶けていることや有機物の量も圧倒的に多いためです。

この流域には、フナやナマズやオイカワなどが生息しています。

広瀬川は流域ごとに川の環境が大きく異なり、そこに生息している魚の種類も違っています。

上流、中流、下流の環境の違いや四季によって、生息する種類の多い広瀬川の魚たちですが、次第に生息数が減ってきている魚もいます。
例えば「アカザ」と「スナヤツメ」です。
「アカザ」は、山形県や岩手県ではまだ見つけられるそうですが、宮城県内にはすでにいないそうです。
「スナヤツメ」は、シーラカンスよりも古くから生息していて、背骨が無く魚とホヤの中間のような生物ですが、まだ広瀬川でも見つけることができるそうです。

そして、仙台市内では数十年前に太白大橋付近で目撃されたのを最後に、姿を消した「アカヒレタビラ」というタナゴがいます。
二枚貝に卵を産みつけるため、貝の減少が「アカヒレタビラ」の減少に影響していると考えられています。 名取川水系には、まだ生息しているようです。

広瀬川には、川と海とを行き来する回遊魚もいます。
「サクラマス(ヤマメのうち、川と海を回遊し再び川に戻って来たものを指す)」です。

「母川(ぼせん)回帰」と呼ばれます。サクラマスはどこまで回遊するかというと、ロシアのオホーツク海を1年かけて回遊し、翌年の春にまた同じ川に戻って来るのです。

 サクラマスは、冬に孵化して川で育ちます。
外敵から身を守るため、稚魚の頃は、川底の砂利に似た模様をしているのが特徴です。

春になり海に下ると、海の外敵から身を守るためにキラキラとした銀化(ギンケ、ヒカリとも呼ばれる体色変化)が始まります。

海鳥から狙われないように、背は海と同化する青色となり、腹は海の底から水面を見上げたときに反射する銀色になります。

1年経つと、秋にはキラキラした銀化からピンク色の婚姻色となり、産卵のために再び広瀬川に戻って来ます。

 このサクラマスも、川の環境変化の影響により、この20年間で数が激減してしまっているということでした。

後半は、実際の釣り講座です。

仙台で出来る釣りには、「エサ釣り」「疑似針釣り」「おとり釣り」があり、それぞれ釣り道具も違ってきます。

その中でも、簡単に始められる「のべ竿釣り」の仕掛けの作り方を教えていただきました。

竿と糸と針をつなげればいいのですが、その基本的な結び方である二つの結び方を実際にやってみました。

「ダブルサージャンスノット」:糸と糸を結ぶ結び方
「ユニノット(フリーノット)」:糸と針を結び結び方。

頭ではなく体で覚えるまでが、たいへんかもしれません。

次にエサですが、単純に生餌や疑似餌を使って魚を呼び寄せるだけではダメで、その川のその時期に、魚がどんなものを食べているのかを知ることが重要だといいます。魚が食べたいエサを投げてやることが、ヒットの秘訣なのだとか。

先生たち研究者は、最初に釣った魚に生態研究のために使う「ストマック・ポンプ」という道具を口から差し込み、胃の内容物を取り出して調べるそうです。

たしかにこれだと、そこの魚が何を食べているのか、はっきりとわかります。それによって、釣りに使う生餌や疑似餌を選ぶわけです。

 棟方研究室の活動では、震災後の野生メダカ保護活動『メダカの里親プロジェクト』が有名ですが、今回は、4年生の伊藤崚さんから『河川横断物と魚について』というテーマで行っている取り組みの報告がありました。

例えば、川に1mの垂直の段差があったとします。
越えられる魚もいますが、越えられない魚がほとんどです。

この段差、つまり「河川横断物」は、自然の「滝」などを除いた人工の「ダム」や「堰」を指します。

サケやサクラマスのように遡上行動をして産卵する魚にとっては、この段差によって産卵に適した上流にまでたどり着けない事態になっているのです。これが個体数の減少を引き起こし、川環境の悪化にまでつながっていくのです。

そこで、打開策のひとつとして取り組まれているのが、魚が遡上しやすい川づくり事業です。低コストで短期間の工期で可能な「魚道」づくりが、全国的に企業や行政との共同プロジェクトとして行われています。

しかしながら、特に小さな河川の場合は、まだほとんど手がつけられていないのが現状なのだそうです。

 棟方研究室での取り組みでは、八木山の竜の口渓谷の堰堤改修プロジェクトによって、広瀬川から魚類をはじめ多くの水生動物や昆虫が上って来ているという調査結果が出ているという報告でした。

川環境の改善や保全につながる素晴らしい取り組みだと思いました。

今回の講座では、私たちの一番身近な場所を流れている広瀬川と、そこに棲む魚を通して、川の環境について学ぶことができました。豊かな川があってこそ「釣り」を楽しむことができるということを教えていただきました。

「釣り人は川の環境の番人である」という言葉の意味がよくわかりました。

棟方先生、伊藤崚さん、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

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