和製本を学ぶ ~御朱印帳(複葉折り本)をつくろう~【サロン講座】

たまきさんサロンスタッフです。
1月18日(土)に、『和製本を学ぶ~御朱印帳(複葉折り本)をつくろう~』と題した講座を開催しました。
講師には、和綴じ製本作家の永澤 裕子(ながさわ ゆうこ)さんをお迎えしました。


永澤先生は、仙台市内をはじめとした近隣の文化施設において、本の修理や、和綴じの技術を多くの方に知ってもらうための講座・講習会を数多く開催して活動されています。
今回のサロン講座では、参加者自身が実際に制作実習をしながら和綴じ製本の技術を教えていただきました。

今回は、巷でブームにもなっている「御朱印帳」を手作りしてみようという講座を企画しました。

正確に言うと、「集印帳」をつくります。これは、御朱印に限らずスタンプなど文字通り「印」を記念に押して保存する帳面のことです。「御朱印帳」と呼ぶと、神社仏閣でいただく朱印に限定され、宗教的な意味合いが強くなります。そもそも神社でいただく「御朱印帳」は、寺院で写経し納めた証として朱印を押してもらったのが始まりと言われているそうです。

余談になりますが、正式な製本師は「経師(きょうじ)」と呼ばれ、この「経」は、製本という技術が「お経」から始まったことを意味しています。

では早速、「集印帳」の制作にとりかかりましょう。

お遍路さんは、「四つ目綴じ(よつめとじ)」という糸綴じ仕立ての「納経帳」を持っている方が多いということですが、今回はそれよりも古い、糊で綴じる「複葉折り本」という仕立方で集印帳を制作します。実際に販売されているものではB6サイズが多いのですが、今回はそれより少し大きめサイズで作ります。

材料は、中身用に見開きサイズにカットされた奉書紙(ほうしょし)15枚、表紙(ひょうし)には表具布と芯ボールを使います。

手作りの良さは、材料の材質や色、柄などを自分好みで自由に選べるということです。今回の参加者の皆さんにも、きれいな模様の表具布をお好みで選んでいただきました。

作業の前に、まず先生からカッターナイフの正しい使い方を教えていただきました。「刃は立てないで寝かせて使う」これが紙や布をきれいに、安全に切るコツです。それから、小まめに刃を新しいものに替えることも重要です。

和本に限らず、紙が綴じられている辺を「背」と呼びます。それ以外の三辺、上辺を「天小口」、下辺を「地小口」、背と相対する辺を「前小口」と呼びます。ただし、折り本には「背」がないことが大きな特徴ですので、左右の辺がどちらも前小口ということになります。表紙がつく前の、糊や糸で綴じられた用紙の束が「中身」と呼ばれます。

最初の工程は、「中身」づくりです。
(1)材料の奉書紙を一枚ずつ、中表に(つるつるした面が中になるように)折へらでしっかり二つ折りにしていきます。折へらを使うのは、折り山の高さを潰すため(指や爪を使うと紙の繊維が伸びてしまうから)です。

15枚を二つ折りにし終えたら、裏面に糊を引くための印を付けておきます。

折へらを使って紙を折るのは初めてという参加者がほとんどでした。

折り終えた後、中身の束に折りへらを当ててやると、左右の厚さが均一になり、美しい紙の束が出来、ちょっと仕事をした満足感を感じました。

(2)「丁合いをとる」二つ折りのままの用紙を一枚ずつ、折り目側と開く側をたがい違いに重ねていきます。蛇腹状の重なりになるようにイメージします。

(3)「突き揃えをする」重ねた中身に、折り目と平行に紙の帯(おび)をかけます。四辺を机にとんとんと立てて紙を揃えます。

(4)「糊をいれる」片側を目玉クリップで留め、前小口側の紙の裏同士をでんぷん糊で貼り合わせます。

(5)同様に反対側も貼ります。この工程で、最初に裏面に付けた印が目印になるのです。

(6)「風をいれる」余分な糊を拭います。

ここまでの作業が、前半です。皆さん、かなり緊張気味でした。
初めての作業ということもあって、ここまでで1時間半近くかかっています。

少し休憩して、先生がつくられた作品を手に取って拝見しました。

今回は「複葉折り本」という手法で集印帳を制作しましたが、この方法で用紙を厚紙に替えてつくると、例えば中身の一枚に切り込みを入れるだけで、ポケットになったり、窓になったり、写真の縁止めにもなったりという、スクラップブックとしての応用が利きます。

御朱印帳としての使い方だけではなく、思い出の写真やチケットの半券などを保存しておくのもいいかもしれませんね。

第二の工程は、「表紙」づくりです。集印帳の表紙になるものを作ります。
(1) 芯ボールを用意する。中身の大きさに合わせて、黄ボールという紙を切り取ります。

下線に沿ってステンレス定規を当てて、カッターナイフで切っていくだけの作業なのですが、黄ボールが固いので両手に力が入り、かなり大変な作業になりました。

なかなか切れません! 
先生は8回位で切り離せるのですが、20回かかった方も!

刃の寝かせ方や刃の替えだけではなく、力の入れ具合など経験によるものも相当影響しているのでしょうか・・・

(2)おもて紙を用意する。表紙の顔となる部分です。千代紙、表具布、襖紙などが使われます。

今回は、表具布を使います。文字通り表具に使う、裏打ちされた布です。表具のあまり布が手に入るといいですね。

芯ボールの外辺(中身寸法)から、四方15mm位の大きさに断ちます。

(3)おもて紙で芯ボールをくるみ、表紙を二枚作ります。

まず、両サイドのおもて紙(表具布)を折り返し、糊で貼りつけます。この時、おもて紙のたるみが出ないように、しっかりぴんと張って糊づけすることが重要です。

次に、四隅の角を中に折り込み、角をきれいに整えます。

天・地も同様に折り返して、貼りつけます。

最後の工程は、「中身と表紙の貼り合わせ」です。
(1)表紙の裏側の折り返し部分にのみ、濃い糊をつけていきます。

表紙は、おもて紙の分だけ中身よりもひとまわり大きくなっています。1mm以下のこの微妙な部分には糊をひかずに残します。裏面全体に糊づけしないのは、表紙の貼り替え修理を容易にするためだそうです。改装の余地を残す、これもまた和製本の基本的な考え方です。

(2)中心を取りながら、慎重に中身を表紙に乗せ、貼り合わせます。

もう一面も同様に貼り合わせます。

(3)最後に、糊が紙になじむように貼り合わせた面を奉書紙側から、乾いた布できれいに圧着します。これで、完成です。

はたして、集印帳はうまく出来上がっているでしょうか?

実際に表紙から恐る恐る開いてみると、見事な蛇腹折りのオリジナル集印帳が出来上がっていました。歓声よりも手作りの達成感ににんまり顔の方が多かったようにお見受けしました。

世界で唯一の、機械ではつくれない手作りの柔らかさと優しさにあふれた作品が出来上がりました。このような作品を自分の手でつくるということは、オリジナル作品に対する愛着は言うに及ばず、つくり上げた達成感と共に物づくりの喜びも感じられたのではないでしょうか。

まだまだ奥の深い和製本の世界ですが、たまきさんサロンではこれからも永澤先生にご教授お願いしたいと考えています。

今回の講座を通して学んだことは、折る・断つ・貼るという基本的な製本技術をはじめとして、自分好みの表装を施した自分だけの集印帳が手づくりでもつくれるということです。さらに、表紙が傷んだ場合でも、そのまま捨ててしまうのではなく、修理して長く使うことが出来るということも教わりました。手仕事の良さ、面白さも実感できたのではないでしょうか。

皆さんの口から「使ってしまうのがもったいない」という声も聞こえてきました。

たくさん、御朱印をいただいて来てください。そして、またご自分でオリジナル集印帳づくりに挑戦されることを期待しています。

先生の講座は、今回制作した集印帳を入れるための「函づくり(夫婦函仕立て)」へと続きます。永澤先生、ありがとうございました。ご参加いただいた皆さま、お疲れさまでした。

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