生産者と消費者が一緒に育む、持続可能な食環境を目指して【サロン講座】


たまきさんサロンスタッフです。6月26日(水)に「生産者と消費者が一緒に育む、持続可能な食環境を目指して」と題し、持続可能な食環境をつくる取り組みについてのサロン講座を開催しました。

講師には、畜産農家「むすびファーム」の上野まどかさんをお迎えして、“美味しい食材”がどのようにして作られ、どのように未来へつなげていけばよいのかについて教えていただきました。

講師の上野まどかさんは、宮城県登米市の稲作と畜産の農家のご出身です。
仙台の大学を卒業後、東京の企業に就職。その後、地元にUターン。2016年から実家の農家で黒毛和牛の繁殖と米作りをされています。
また、実家の田んぼをつかって「田植え&稲刈り体験」の企画を立ち上げたり、「東北風土マラソン&フェスティバル」の実行委員をされて、地域を巻き込んだイベントを積極的に行っています。


「はじまり」

上野さんは、生まれた環境が農家でありながら、食べることは好きでしたが、もともとは生産には無関心だったと言います。2010年に環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の日本の参加検討が話題に出て来た時に、生産者や企業の意見ばかりがクローズアップされ、実際に農産物を食べる消費者が無関心なことに気づき、報道の世界に興味を持ち新聞社に入社。新聞社時代にお父さまが倒れ自分自身も「食」に関してとても弱い立場にあることを実感し、まず自分自身がちゃんと「農業」と向き合おうと決意します。

そして、農家を継ぐ決意をするもお父さまから猛反対され、まずは「東京で出来ることをやってみよう!」と、広告会社の地域事業部に転職。故郷登米市の農業をベースにした地域活性化事業やお米と仙台牛を使ったお弁当を企画するなど、積極的な活動を開始します。

その後、『東北食べる通信』(定期購読会員向けの食物付きの情報誌)のふるさとプロデューサーとしても活躍されています。



「Uターン」

自分自身も生産者として消費者とつながりたいという思いがますます強くなる中、登米市の実家に2016年にUターンします。
とは言っても、農家の実状をわかっているお父さまは、上野さんが実家の仕事をすることにやはり反対されたといいます。

まず、上野さんの1日の流れを教えていただきましたが、かなりハードなスケジュールに受講者の皆さんは驚いていました。
若い娘がこれをやりたいと言ったら、やはり親としては反対するかもしれませんね。


牛がいる限り、毎日休みなく続くわけですから・・・。


「ブランド牛」

宮城県のブランド牛と言えば、「仙台牛」ですが、全国にはなんと200銘柄のブランド牛が存在するそうです。

まずは、よく目にする和牛のランクについても教えていただきました。


A5・B5ランクの格付けに入っているのは、仙台牛だけということに驚かされました。
仙台牛って、そんなにすごかったんだ!

さらに登米市では、そんな仙台牛の40%位を生産しているということです。

上野さんの実家は、現在、親牛(繁殖雌牛)が11頭と産まれた子牛を飼養している黒毛和牛の繁殖農家です。

排泄物は全量堆肥としてコンポスト化し田畑に撒きます。そこで採れた米や稲わらを牛の飼料にするという循環型サイクルによる稲作と畜産の経営が行われています。どうやら、このあたりがおいしい牛ができる理由のようです。


ちなみに、メスのお肉の方がおいしいということです!


「繁殖」

肉牛の生産には、上野さんのお宅のように繁殖して子牛を出荷する「繁殖農家」と、その子牛を買って肉牛に育てて売る「肥育農家」の2つの生産者が関わっています。
牝牛は生後13ケ月位で種付けが行われ、その後1年1回のペースで5〜10回ほど、子牛を産むそうです。

牛は種付けから始まって(妊娠期間は約10ヶ月)、生まれてからお肉になるまで、2年半から3年という時間がかかります。生まれた時には25㎏~40㎏だった子牛が、10ケ月後に子牛市場に出荷される頃には300㎏位に成長しています。その後さらに1年半〜2年位かけて650㎏~900㎏位(雌と去勢でも大きさは違います)大きさに肥育され、食肉市場に出荷され、400kg〜600くらいの枝肉になります。


「Animal Welfare (動物福祉)」 

これは、初めて聞く言葉でした。このような指針のもとで、肉牛も適切な管理がなされて生産されていたのですね。

上野さんのお話では、牛も5歳児位の知能を持っていて、面倒を見てくれている人をちゃんと見分けられるそうです。


「食べ物をとりまく環境」

食べ物をつくる人も食べる人も、お互いが見えない中で、「食」への意識が低下している状況が、今の食べ物をとりまく環境なのではないのかと上野さんは指摘します。

つまり、「誰が作っている食べ物なのかわからない」「モノとしてだけの食べ物になっている」「誰が食べているのかもわからない」ということです。

それぞれの立場で、かかえている問題点や疑問点を見ると、以下のようなことがあげられます。

これらを解決する手段のひとつとして、生産者と消費者の接点づくりが考えられます。

そこで上野さんは、まず「田植え&稲刈り体験」を企画実施してみました。

これはつまり生産者と消費者を「見える化」することです。

一番身近で毎日食べる食材である「お米」を通して、生産の現場を見てもらう、体験してもらい知ってもらうことで、自分は誰が作った食べ物を食べているのか、自分が作った食べ物は誰に食べられているのかがわかり、そこに絆が生まれ仲間意識が生まれるのではないでしょうか。

CSAというシステムも、生産者と消費者をつなぐ有効な手段のひとつでしょう。

そして、自分の足元である「むすびファーム」から、そして登米から情報を発信していきたい。「農家のロールモデル」になりたいというのが、上野さんの目標です。

都内で仕事をしている時から「東北風土マラソン&フェスティバル」の実行委員としても活動していた上野さんは、Uターンしてからも実行委員として活動しています。


「おいしいの向こう側を伝える」

「東北風土マラソン&フェスティバル」という催しは、マラソン大会を通して東北内外はもちろん、世界中から人を集め、東北の魅力的な「風土」と美味しい「FOOD」を存分に楽しんでもらいたいという主旨のもと誕生した東北と世界をつなぐ企画です。

この催しの中の「東北風土ツーリズム」という催しで、登米の食の魅力を伝えるツアーを企画しています。それが「生産者と味わう仙台牛満喫ツアー」です。


豊かな食材を100年後にも200年後にもつなげていきたいというのが、上野さんの思いです。


そのために、ひとまず生産者と消費者にできることは何でしょう?


「まとめ」

生産者や国、自治体だけが食料について考えていればよいのでしょうか?
食べる人はモノとして消費して、余ったら捨てる。それで良いのでしょうか?

たしかにスーパーには、いつもたくさんの食材が並んでいます。
2011年の震災の時には、あの棚が空っぽになったことを覚えていますか?

例えば、2000年と比べると農業人口は、半分に減っています。日本の食料自給率はカロリーベースで38%です。そして、今まさに問題になっているフードロスは、毎日一人お茶碗一杯分出ています。

未来に向けて、みんなで考えなければならない大きな問題です。

今回の講座では、美味しい食べ物の向こう側にある生産者の苦労や思いを知ることが出来ました。そして、われわれ消費者にも“美味しい食材”を未来に残すために、少なからず責任があるということを教えていただきました。

上野まどかさん、参加者の皆さん、ありがとうございました。


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