音(オト)―ク~音を録る者と音を奏でるものに聴く【サロン講座】

たまきさんサロンスタッフです。
5月25日(土)に「音-ク~音を録る者と音を奏でる者に聴く~」と題して、何気ない生活の中で聞き取れていない生き物などの音から生物多様性を感じ、身近な生き物を知ろう、というテーマでサロン講座を開催しました。

講師には、福島大学共生システム理工学類 永幡幸司教授、ゲストにバンド「アンテナ」のメンバーで仙台出身の渡辺諒さんをお迎えし、第1部では永幡先生の講義、第2部ではお二人とのトークディスカッションなどという、二部構成での開催となりました。

第1部が始まる前には、仙台市環境局環境共生課の職員から生物多様性とはどんなことなのか、仙台市が行っている生物多様性保全に関する取り組み、今回開催に至った経緯などが紹介されました。

<仙台市の生物多様性保全に関する取り組み>

仙台市では平成29年度から市にゆかりのある生きものの奏でる音をテーマにした啓発事業「生物多様性保全推進事業~せんだい生きもの交響曲~」をスタート。市民の方に豊かな自然や多様な生きものへの理解と関心を高めてもらうために様々な取り組みを行っています。
その一つとして、仙台にゆかりのある生きものであるカジカガエル、カッコウ、スズムシなどの生きものが奏でる音を録音し、ホームページから無料でダウンロードできるようにしています。この取り組みの際に、今回の講師でもある永幡先生にも、音の専門家として録音にご協力いただいたそうです。

<開催のきっかけ>

2017年に渡辺さんが所属するバンド「アンテナ」がメジャーデビューをするタイミングで、当時Date FMで元サッカー選手の千葉直樹さんとレギュラーを担当していたラジオ番組「サウンドジェニック」内の企画で、ファンやリスナーから自分の身の回りにある身近な音を募集し、それをもとに楽曲を作るということがあったそうです。ファンやリスナーからおよそ200ほどの音が送られてくる中、仙台市の事業にも音の専門家として協力していただいていた永幡先生ご自身も、事業の中で録音したある生きものの鳴き声を応募したところ見事採用され、楽曲が完成しました。

そこで今回お二人をお招きして、当時のお話も含めて生きものや音についてどのような考え方を持っているのか、聞かせていただく機会が実現したとのことでした。

ここで、永幡先生、渡辺さんにも登場していただき、永幡先生が録音した生きものの鳴き声が使われた楽曲を聞いて、カジカガエル、カッコウ、スズムシの内、どの鳴き声が使われているかクイズが出されました。
みなさん楽曲に真剣に耳を傾け、見事正解にたどり着いていたようでした。

クイズの答えでもある生きものとは「カジカガエル」

カジカガエルは鳴き声に特徴があり、「日本一美しい声で鳴くカエル」と言われているそう。環境省が定めた「日本の音100選」には、「広瀬川のカジカガエルと野鳥」ということで選出されているそうです。清流を好むカジカガエルはきれいな水環境がなければ生息できず、大都市の中でも鳴き声を聞くことができるのは、仙台くらいではないかと言われているそうです。

【第1部】

永幡先生の専門分野は環境音響学・サウンドスケープ論ということで、身近な例をあげながら、たくさんのことを教えていただきました。

<サウンドスケープ>
サウンド(音)+スケープ(風景、景観)
R.マリー・シェーファーによる造語で、直訳すると「音(の)風景」「音(響)景観」になります。
この言葉は、世の中的にはバラバラの意味で使われていますが、学術的には個人又は人々が知覚・経験・理解した音環境と定義されているのだそうです。

講義の中でいくつかの課題が出されました

①聞こえた音をすべて書きだしなさい。
参加者同士でお互いに書き出した音について意見交換する様子も見られました。
近くに座っていた人同士でも、書き出した音は意外と違っているようでした。そのことから、音を聞くということは、とっても個人的な経験なんだというようにまとめていました。そして、だからこそ、人々がどのように音を聞いているのかということに着目するサウンドスケープという考え方が、とても大事なのだ、とのことでした。

<フィールド・レコーディング>
フィールド(現場)+レコーディング(録音)
録音したい音が鳴っているところに出向き、録音すること、あるいは録音した音を意味します。
仙台市の生物多様性保全推進事業の一環としても行われていて、場所によっていろんな録り方があるそうです。

ここで再び永幡先生からの課題です。

②これから紹介する街はどこか?
・大都市でありながら、海や山に囲まれた緑溢れる街
・近代的なビルの合間に緑の公園が顔をのぞかせる
・自然と都会が見事に融合した、とても住みやすい環境が魅力的

仙台と答えていた方が多かったようですが、正解はバンクーバー。インターネットでバンクーバーを紹介するページを検索して、そこから持ってきた言葉なのだそうです。 バンクーバーと仙台は似ているところがたくさんあるから、言葉だけ聞くと、区別がつかなくてもおかしくないのだそうです。このことから、風景を伝えるには100の言葉よりも数枚の写真やその土地を象徴する音が有効という教訓が得られます。だから、サウンドスケープの研究をする人は、現場の音を録音することにもこだわる人が多いとのことでした。

生物多様性事業で配信している音もISOのサウンドスケープ調査の規格に基づいて、バイノーラル録音で録音されているとのことでした。バイノーラル録音した音は、ヘッドホンで聞くと、録音した場所にいるかのように聞こえるんだそうです。

録音の仕方には色々な方法があり、特別な研究用途を除けば、決してバイノーラル録音でなければダメだというわけではない。むしろ特定の音だけを録りたいときは、ガンマイクの方がよほどいいし、ICレコーダーに内蔵されたマイクでもいい音で録音ができるとのことです。

ではなぜ配信音をバイノーラル録音しているか?

それは「生物多様性」の大事さを伝えるための事業であるから。
生物は個別の種だけでは生き延びていくことができず、またそれぞれに適した環境がなければ生き延びてはいけない。このことを音で表現するには、個々の生き物が出す音ではなく、それらの関係性を表現する必要があると考えたからとのことでした。
生き物の奏でる音を録音しつづけることで聞こえてくることがある。
市民参加で市内の生きものの声を録音しアーカイブにできると、皆にとっても貴重な財産になりえる。まずは、身の回りの生きものの奏でる声に耳を傾けてくださいというお話でした。

【第2部】
第2部では、お二人のトークディスカッションを行いました。お二人には事前にお互いに聞きたいことをアンケートしており、それを中心に参加者からの質問にも答えていただきました。

まずは永幡先生から渡辺さんへ

Q1メジャー・ファースト・ミニアルバムに仙台の音を入れようと思った理由
→仙台の音だけではなく、SNSでまちの音をというところから。『イダンセ街』も仙台を逆から読んで、もじってできた架空の町。

Q2 (Q1と関連して)音を公募しようと思った理由
→仙台を誇れるものを一緒に作りたい。一緒に足取りを感じながら、歩んでいけるようにと思ったから。

Q3応募された音を作品の中に取り込む中で苦労した点
→苦労はあまりなかった。200あまり応募していただいて、10秒くらいのものもあれば、20分近いものもあった。永幡先生の応募されたカジカガエルの声も長くて、いいところを削り取るのは大変だったけど、テーマに合うように楽しみながらできたし、それぞれの生活を感じられてよかった。

Q4応募された音を聞いて、感じたこと・考えたこと
→永幡先生のお話であったサウンドスケープの通り。アンテナはライブソングがバンドのコンセプト。生活音が前に出てくると、ストレスにも感じられるが、応募されたチャイムや横断歩道の音などは、自分たちを温めてくれる。アンテナの曲もそういうものであり続けること、別な表現として考えられるいい時間だった。

次に渡辺さんから永幡先生へ

Q5音は時に騒音になることもありますが、癒し効果になる音との違いは音量差だけなのでしょうか?
→非常に大きな音は多くの人が騒音と感じる傾向はありますが,すごく小さい音でも騒音になることもあるし、騒音になるかどうかを音量だけで説明することは難しい。私たちが音を聞く時には,これまでの自分の体験とかに基づいて,それぞれの音に意味づけをしている。好ましい音,癒し効果のある音というのも,そういうように,自分のこれまでの体験とかによって形成されていくものではないか。

Q6今まで聞いた中で一番見た目と鳴き声でギャップがあった生きものは?
→白鳥。東北地方に住むまで本物の白鳥には縁がなく、見かけ通りに美しく鳴くものだと思っていた。大学に勤めるようになって初めて聞いたとき、想像とは異なるすごい声でがっかりした。元々、カモの声が好きで、それを楽しみに行った時に初めて白鳥の声を聞いたから、余計にがっかりしたのかもしれない。

Q7音が教育や児童の成長や性格構成などに影響を与えることはありますか?
→軍事基地の周りのようなところで大きな音にさらされて育つと、無気力感をいだきやすい子供が育つという研究があるなど、音が児童の成長に影響を与えることは間違いなくある。大人でも、大きな音を聞くと耳が痛いと感じることがあると思うが、子供は大人より小さな音で耳が痛いと感じるので要注意。耳が痛くなるような大きな音を聞いたら、耳に間違いなく影響がある。また、最近はヘッドホンで長時間音楽を聴く人が増えているが、大きな音でヘッドホンを使い続けると、ヘッドホン難聴になりかねない。電車など騒音のある所でヘッドホンを使う時は、ついつい音量を大きくしがちなので、そういう時はノイズキャンセリング機能のあるヘッドホンを使い、なるべく小さな音で聞くようにするのがお勧め。

参加者からの質問

Q心が落ち着く、心地よいと感じる音は
渡辺さん:自然の音。田んぼのカエルの鳴き声などを聞くと、自分の記憶とリンクして、地元に帰ってきた感じがする。
永幡先生:海の音、波の音。荒浜などによく行くが、遠くでなんとなくなっている波音をぼーっと聞いたりしている。

Q永幡先生に対してアンテナ渡辺さんの声はどんな声ですか
→すごくきれいな声。学生時代に音を録音するアルバイトをしていたことがあり、その時に本当にうまい人は限られているというのを感じていたが、本当にうまい人というのは、まさにこのこと。音程が合うだけでは説得力がないし、その秘密がわかれば自分もうまくなれるのではと思うけど、わからないので研究者になっている。真似のできない素敵な声。きっと、自分の声を冷静にフィードバックしながら聞いているからこそ、素敵な声が出せているのでは。

今回の講座で、改めて仙台にもたくさんの生きものがいるのだということを感じました。 普段の生活の中では聞き逃しがちになってしまいますが、生きものについて考えるいい機会になったのではないかと思います。

永幡先生、渡辺さん、参加者の皆さん、今回司会をしていただきました漆田さんをはじめ関係者の皆さんありがとうございました。

サロン内の展示スペースでは講座当日とその翌日、カワラバンさんによる特別開催として「広瀬川に住む生きもの」の展示も行われており、講座終了後は参加者の方々が興味深く観察されていました。

*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*
せんだい環境学習館 たまきさんサロン
平 日 10:00~20:30
土日祝 10:00~17:00
休館日 月曜(月曜が休日の場合は、その翌日)祝日の翌日・年末年始
*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*

カテゴリー: 過去の講座, 環境, 環境講座, たまきさんブログ パーマリンク