結城登美雄先生の講座「東北の風土を生きる人々」なんだか東北人であることが誇らしく思えるね。

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大学の授業が終わりまして、ホッとしていたところにまた来て喋れと。ちょっと戸惑ってます。
たとえば環境学習っていえば、一般では環境だけなのでしょう。何を環境と差すかというと、水俣病とか大気汚染とか公害のことで、高度経済成長を急ぐあまりの裏の側面を表す言葉だたりします。

 

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僕はこの20数年間。仙台に住みながらと言いながら仙台にいなくて、東北の漁村農村をうろつき回って、いろいろなことを考えました。考えたというよりも、そこで働いているお爺さんお婆さんに、いろいろなことを教わったというのが、僕の話の元になっています。
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日本は森林原野が67%。次に広い農業地が12.3%。宅地が5%台です。我々は環境問題というと宅地の問題をとりあげます。でも都市圏は圧倒的に宅地が多いですが、地方は少なんです。そういう現実を踏まえて「環境問題ってなんだろう?」って考えるようになりました。

 

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僕は環境を環境空間と勝手に名付けています。
「どういうところに住んでいるの?」って人は話をしますね。僕は典型的な山間地で育ちました。東北は都市部に比べると、山林が多く宅地はとても少ないんです。一般的に、宅地的環境空間は想像できても、山林や農地に対しては想像力が及ばないというのが現実です。みなさん。環境というと「森は大切」とか言葉が出ますが、それが現実にはどうなのか?田園の保水機能など耳にしますが、誰がそれを管理しているのか?主体なのか?について考えが及ばないので、語ってみようと思います。

 

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例えば田んぼです。秋田は農地の86.5%が田んぼです。宮城は81%です。青森は割合少なくて53%。日本全体は青森と同じぐらい。山形は78.9%。福島は70.1%。東北全体では71%。かなり広大な面積だと思いませんか?

 

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多くの市民は平ったいところに住んでいるので、山は「高いなぁ」ぐらいしか思い浮かべませんが、山でも耕作しているを中山間地と呼びます。国土面積のおよそ73%が中山間地。農業の分類からいうと都市的農業地域と平場(ひらば)的農業地域。それ以外は中間山地文化地域となる。東北においてはそういう中山間地の比率が農家総数のうちの43%。耕地面積の40%にもなります。その中山間地でお米の40%が作られていますが、現実には耕作放棄地がとても増えています。

 

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日本は平らなところが少ないのですが、平場を中心に考えてしまうから「面積を集めれば機械化して効率が良くなる」なんて机上の数値論が出てきたりします。実際には機械の入れない小さな耕作地が多いのです。

 

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こちら。山形の600年続いた9軒の集落です。ここも集落の集約を進めようという政策で町に移住することになり、1970年ごろに僕がその中の一軒を購入しました。
仙山線の7時半の列車で出て、山形まで1時間。支線に乗り換えて1時間。バスに乗り換えて1時間半。さらに歩いて4時間。朝発って、夕方です。
ここで大変なのは雪下ろしです。
これ。30代後半の僕です。3日も4日も黙々と雪下ろしをしていると、なぜ村人がここを去る気になったかが解る気がします。
若かったでしょう?だまして友達に「飯はうまいぞ」「酒はうまいぞ」と連れて行くのですが、次はもう来ない。

 

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なぜこんな個人的なことを話すかというと、暮らし、思い、心などに向かい合うことがないと、金やるからとか迷惑かかるから下りろとか、勝手な、高圧的な言葉が出てきます。
なぜ環境空間かというと、人が住んでいるからです。

 

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私が一番影響受けた民俗学者さんの言葉です。
「自然はさびしい
しかし人の手が加わるとあたたかくなる
その暖かなものを求めて
あるいてみよう」
宮本常一

地球何週分。14万キロを歩いて地域の有り様を提言し、生き続けた方です。

 

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こちら。今から10年近く前のおじいちゃんの話です。
村議会議員だったおじいさんの父は、卒業記念に陽当たりの良い場所に杉苗を植樹しました。
その苗が見事に育って樹齢60年。その300本を売却したら、全部で27万円。間伐し、下生えを刈ること60年。一本1000円で、10%引かれるから900円です。

 

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農山村は、田んぼが小さくても食べていければそれで良し。
田んぼと同じように植林して手入れして、何かの時に売れば現金になるのが山間地の暮らしの基本です。もともとは一本2万も3万もしていたものが、どんどん値段が下がって、今から10年前は千円にしかならない。
樹齢60年の杉って凄いですよ。二人で手を回しても届かない。
みんな山林のCO2吸収機能とか、いろんなことを言うじゃないですか。その60年育てた杉が、一本九百円です。
「オレの山林の維持活動はなんだったんだ!」
びっくりする人たちに、沢山会いました。

 

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67%の人が山林の大切さを口にします。でも誰が守り誰が手を入れるのか?
我々が頭でっかちに環境論を語っていても、現実と向かい合わないと環境を守れないんです。
いままで600ぐらいの村で、三千人ぐらいの人に何が大切かを聞きました。
「水」「光」「風」「土」
言い表し方は様々ですが、これらに知恵を投資し技を使えば、自分の暮らしに必要なものの多くは作れるんだよって村人は言います。

 

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そして、神様。
水光風は神様。土は作れないけど良くすることができる。土を良くする仕事。それが農業の基本というお爺さんと会いました。
いろんな要素があります。農業という産業論的には言いません。
農耕。耕すです。
海なら漁業ではなく漁労。

 

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海の環境。岩手宮城はリアス式海岸です。
岩手の海岸で700キロ以上。そこに100もの漁港があります。
宮城は半島があるので800キロあまり。福島は167キロ。
全国では12キロに一個ぐらい港がありますが、東北は6キロに一個あります。
漁業が非常に盛んだっていうことです。

 

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漁業というと男の仕事と思いがちですが、女性が多くをサポートするので半分です。
さらに牡蠣剥きなど多種多様な仕事があるので、オジいちゃんオバァちゃんも働きます。

 

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三陸沖は世界三大漁場なんて言いますが、沖合に出るととても荒れる。
金華山は、沖に出るとだんだんと(水平線に)沈むので、半分ぐらいの漁場でやめろよ。
三分の一ぐらいでやめとく。と、したくても、沖合に出ると魚が多いので、つい外洋に出る。
世界三大漁場ですが、ここは親潮と黒潮がぶつかり合うために世界三大難所でもあるんです。
金華山灯台ではひと月に13回ぐらい、危険だから沖に出るなと警報が出るところなんです。

 

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各地に海難殉難者慰霊碑があります。ものすごい数があります。みな太平洋に向いています。
お墓には、必ずといって無縁塔も多くあります。これは確証はありませんが、まだ戻らない人のためと考えられます。
こういう現実を見ていないと「金華鯖は旨いんだ」などの上っ面の言葉が巷に流れます。
厳しいけど、でも海の恵みがあるんだよと。それが人々の暮らしです。

 

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ここは下北半島六ヶ所村。
いちいち色々と言いませんが。。。東京の考えではなく。。。現場にはこんな暮らしもありますが。

 

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エネルギーの現場として歩くと、家々の横には薪があります。家々の煙突から煙が上がります。
農家の人、漁師の人は、新しいエネルギーもあるが、昔のものも大切。
集会場には薪ストーブがある。薪ストーブは、人が一人いれば大丈夫。
みんなが来るまで準備して、火を囲むと話ができる。
古きものと新しきものの混在。これが東北の山村が示す、ライフスタイルの一つではないかと、私は思うのです。

 

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エネルギーに関しては特にこれ以上言いません。つづいて食糧需給率に関しては全国39%。だけど青森108、岩手106、宮城72、秋田117、山形133、福島73、東北は105%です。高いんです。低いのはここです。東京1%。ほかだいたい三大都市圏。ゼロ。
東北地方は、900万人の食糧は、ほぼ賄うことができます。北海道は大規模化しているのでとても多いですが。東北はちゃんと自立しています。

 

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食糧に関しては、人を分類すると、意識の高い、良いものを選択する積極型。健康指向型。これは意識しているけど情報に弱い。みの○んたに騙されやすい人。あとは安ければいいの無関心型。でも一番問題なのは分裂型。口では環境は大事よ農業は大事よ健康は大事よっておっしゃるのに、スーパーでは安い輸入品を選ぶ人。言ってることとやってることがバラバラの分裂人です。

 

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こうやってみると、日本の食。これからも、あり続けますか?無くなってしまいますか?
日本の環境も。良くなっていきますか?悪くなりますか?
どっちですか?
僕はそれに、誰が?を付け加えます。

 

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こちらは日本海の遊佐町。
海に臨む浜に卒塔婆が立っています。
ここは飢饉の時に、鮭に救われた。そういう時の思いをまだ持っているのです。

 

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ここでは鮭を1000本殺したら、人を一人殺したと思えとの教えが今でも残っているのです。

 

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なので、いまでも毎年、鮭の漁労の季節が終わると、卒塔婆を立てて供養している。

 

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そういうところでは、鮭の頭、内臓、ウロコ一枚無駄にしない伝承料理が今でも残っています。
それは、ちゃんと生き物に向かい合っているということです。

 

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海だけではなく山にも。
ここは20数年通っている福島県の桧枝岐村です。東北で一番小さな自治体で人口604人。姓は3つしかありません。
人が多いと良い街だ。少ないと消滅可能集落なんて勝手なこと云いますがそうではない。

 

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ここには檜枝岐歌舞伎という、国の重要無形文化財がある。
自分たちが自費で、これを年3回興行している。
働くだけではない。皆で一緒に楽しみを共にする。これが村人だよ。
江戸時代に江戸で見た歌舞伎を「自分たちでもひらきたいなぁ」と始めたのが、この歌舞伎です。
中央にとって低い評価しか与えられない村が、人間にとって大切なのが何かを教えてくれます。

 

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東北で唯一米の作れないところです。
お米がとれるようになって定住できるなんて云いますが、ここには1000年の歴史があり、ちゃんと暮らしています。
人口は江戸時代で472人。今から30年後に檜枝岐がなくなっていると思うでしょうか?

 

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「美しい村など
はじめからあったわけではない
美しく暮らそうという
村人がいて
美しい村になるのである」
柳田國男

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