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「だれ一人取り残されないために =僕の国キリバスからのメッセージ=」【サロン講座】 

たまきさんサロンスタッフです。
10月31日(土)に「だれ一人取り残されないために=僕の国キリバスからのメッセージ=」と題し、講師に一般社団法人 日本キリバス協会代表理事ケンタロ・オノ氏をお迎えし、中央太平洋の島国キリバス共和国(以下「キリバス」)のこと、国土水没の危機、そしてSDGsのことを学ぶサロン講座を開催しました。


「美しい南の島」

たまきさんサロンでは、毎年ケンタロさんにサロン講座の講師をお願いしています。
いつものようにキリバスの正装である「テ・ベー(布の腰巻)」と「半袖柄シャツ」、「貝殻の首飾り」に「花飾りの冠」という出で立ちで登場したケンタロさんでしたが、今年はコロナウイルス対策として、マウスシールドをつけてのご登壇となりました。今は、コロナウイルス感染症の影響により、残念ながら大好きなキリバスにも戻れない状況にあるそうです。

仙台市出身のケンタロさんは、小学校5年生の時に興味を持った美しい南の島へのあこがれが高じて、キリバスの高校に編入学、ついには23歳の時に日本人では初めてキリバスに帰化。
2000年にはキリバス国籍を取得するという子どもの頃からの夢を大きくかなえられた方です。

現在は日本に移住して、各地で公演や講座講師、キリバスへの支援事業などをこなす日々を送っておられます。
そんな中、昨年新設された「宮城県ストップ温暖化大賞」を受賞されました。
これは同賞の第一号受賞者となります。
また、この10月には令和2年度の「気候変動アクション 環境大臣表彰」を普及・促進部門で受賞されたばかりです。


「狭い国土」

ケンタロ少年の胸に鮮烈な印象を残した青い海、青い空、そして白い砂浜―そんなキリバスという国は、3つの諸島からなり、サンゴ礁でできた島々が33島集まってひとつの国を形成しています。
中でもフェニックス諸島保護地域は、世界遺産としても登録されています。

東西5000kmの広さに散らばった島国です。(日本列島は3500km)ただし、「山も川もない」「平均海抜2m」「首都タラワの幅は平均でわずか350m!」という国土です。
すぐ向こう側にはまた海が見える!という細長い島なのです。
ここ青葉山新キャンパスの真ん中を貫く構内歩道でも、約500mあることを思えば、どのくらいの細さかわかると思います。

広大な海域に散らばった島々に、約11万人の国民が暮らしていますが、これは、日本列島がすっぽり入るような海域に散らばった小さな島を合わせれば仙台市ほどの面積になり、そこに仙台市の1/10の人口が暮らしている国といえば、その規模がイメージできるでしょうか。


「2050年危機」

そんな楽園イメージの南国の島々が、いま危機に瀕しています。

この「2050年危機」というのは、世界銀行の報告書によれば、首都のあるタラワは、2050年には面積の25%~80%が海面上昇などの影響によって浸水するおそれがあるというものです。
キリバスの多くの島々では、大潮のたびに住宅地が水に浸かるという状況が頻繁にみられるようになって来ています。高波や高潮などによって海岸が削られ、砂浜が流出し、海による海岸浸食がかつてない勢いで進んでいます。

キリバスには川が無いために、真水は雨水の貯水と地下水に頼っていますが、年々その地下水量も減少し、海水による塩分濃度が高くなって来ているといいます。つまり、しょっぱい飲料水を飲まざるを得なくなって来ているのです。

すでにキリバスのアノテ・トン前大統領は、大統領在任中国民の他国への移住計画を発表しました。
そのために、単なる難民ではなく技術を身につけた労働者としての移住が考えられているのです。
これを受けて、同じ太平洋のフィジー共和国は、もしキリバスの国土が水没した場合には、キリバスの全国民をフィジーに移住させる用意があることを公式に表明しています。

遠洋カツオ一本釣り漁船の乗組員は、実は半数以上が出稼ぎのキリバス人なのだそうです。
そのために、キリバスには職業訓練学校があるほどです。こういう技術を身につけることによって、たとえ他国へ移住したとしてもキリバス人として生きていけるような対策が進められています。

たとえ最悪の結果となった時も、環境難民には決してならない。
受入国の負担にならず、受入国にとって有益な職業人として、尊厳ある移民を目指すというキリバス人としての誇りが感じられます。

とは言っても、自分の国に住めなくなってしまうことは、計り知れない悲しみです。
ケンタロさんが、自国の深刻な状況を懸命に世界に向けて訴え続けているのは、キリバス人としてキリバスという国を思うがゆえのメッセージなのです。


「SDGs」

最近、新聞やテレビでもよく見聞きするようになった「SDGs(エスディージーズ)」という言葉があります。
色分けされた17のアイコンは、誰もが何らかの機会に目にしたことがあるはずです。
小学校の授業でも「SDGs」は取り上げられるようになりました。もしかしたら、おとなの方がまだよく知らないでいることかもしれません。

この 「SDGs(エスディージーズ)」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で決められた国際的な共通目標です。
長期的な指針として、“2030年までに達成すべき17の目標”が掲げられています。
それが、よく目にする色分けされた17のアイコンなのです。
さらに、この17の目標をより具体化した169のターゲットも示されています。

今のキリバスがかかえている問題は、この17項目のほとんどが当てはまるようだとケンタロさんは言います。

今回の講座タイトルにも使用した「だれ一人取り残されないために」という言葉は、SDGsにおける基本理念であり重要なスローガンです。

現実には、地球のどこかで誰かが取り残されている、取り残されようとしている。
子どもたちに対して、おとなは
「たまたま、こんな時代にこんな国に生まれてしまって、かわいそうだけど運が悪かったね」
という言葉で済ませられるのか? 済ませてしまっていいのか? と、ケンタロさんは問いかけています。


「さいごに」

毎回、講座の終わりには
「愛の反対とは、憎しみや恨みではなく無知と無関心なのです。関心を持たれないことが一番つらいことなのです」
と、ケンタロさんは結びます。

反論でも批判でも疑問でも何でもいいので、まず今のキリバスという国に目を向けてほしいということです。

目を向ける――つまり関心を持つことが、問題解決の第一歩です。

さあ、そこで何をすべきなのか? 何ができるのか?

ケンタロさんは、けっして答えを提示しません。
それは、関心を持った人それぞれに課された宿題だからです。

無関心が想像力の欠如を生み、やがて取り返しのつかないような重大な結果を生じさせてしまうことは、我々はすでに何度も経験済みのことなのではないでしょうか。


「SDGs」に関する本や、ケンタロ・オノさんが書かれた『キリバスという国』(エイト社発行)は、たまきさんサロンにも置いてありますので、ぜひ読んでみてください。

ケンタロ・オノさん、そして参加者の皆さん、ありがとうございました。


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