日別アーカイブ: 2012年9月24日

東北一厳しい山!

たまきさん登山隊!出発

たまきさんブログも、ちょっと山のネタばかりでは登山日記になってしまうので、少々記事にしたりしなかったりすることがあるのだけれど。。。今回のは少し遅れたけど、凄い山ですよ。
東北は、関東地方の山に比べると高緯度の地域にあるので、標高換算はプラス500メートルとなります。
そして日本全国を見回してみると、確かに一般の人が登れる山でも、危険な場所というとこがありまして。。。。トップは映画にもなった劔岳です。あそこは標高が高い割に公共交通機関の終着点、室堂からのアクセスもいいので、かえって事故が多いぐらい。登山口までのアプローチは、もう少しハードルをあげたほうがいいのではないのかなぁ?って思うほどです。
そして東北には、その劔岳に並ぶ難易度の山があるんです。それが今回の目標である飯豊連峰です。


トイレ???

飯豊連峰は、何といっても登山口から稜線までのアプローチの長さ、一気に1000メートル以上を登る体力的な難しさに加えて、いざ天候が急変した時など、全く逃げ場(エスケープルート)がない、ちょっと登山を始めたぐらいの人では、予備食や緊急避難やら、プランニングすりゃ難しい山塊なんです。

っで、なんでこんな小難しい話にトイレなの?って。このトイレ、凄いんです。
森の中を15分ほど歩いたところにあるんですけど、水洗。バイオ処理トイレなんです。


トイレです。

日本の山って、最近割と汚物処理がしっかりできるようになってきたんですけど、特に国立公園の整備度はハンパない。
太陽光発電のバイオ処理なんて当たり前。驚いたことに清掃まで行き届いていて、会社のトイレより綺麗な時がある。

手洗いが良い感じ

もう。。。こんな手洗いまで。
なんて心の行き届いたサービスでしょう。


ぶっ壊れた橋

では、登山に戻りまして、飯豊連峰。
この飯豊連峰には、ダイグラ尾根という、山頂に行き着くだけで10時間もかかるとんでもない尾根がありまして、コースも途中に危険箇所をいくつも通過するので上級者向けと言われています。技術とパワーが要求されるんですね。
だけど例年にない昨冬の豪雪で、登山口にあったつり橋が崩壊してしまい、今季が絶望と言われていたんです。
これ、橋の板は冬用に取り外してあるのですが、なんと支持ワイヤーがボコボコ。
そして聞いた情報だと、岩盤に固定しているアンカーもヤバいのだとか。こりゃ~ダメだ。


徒渉

ところがところが!
捨てる神あれば拾う神あり。今年の東北は例年にない小雨で、つり橋の下の梶川が異常渇水をしていて徒渉(歩いて川を渡る)ことができるという情報を掴みました。
さっそく偵察に出てみると、確かに水が少なく、例年は腰上まで来る水流が、膝下までしかない!これは行けるってんで、僕らは問題の川を渡ることができました。
(徒渉が成功しても、ダイグラ尾根は多くの部分が今期は未整備のままです。アタックは個人の責任で。特に今期は尾根上に水がありません。)

写真は、僕らが川を渡ってしまったんで“ちぇっ。もうここは釣れねぇや!”ってんで、下流まで歩くことにした釣り師です。


急峻な登り口

さぁ東北一難易度の高いダイグラ尾根に取り付きました。何?この急角度。
登り始めから急登が続くと聞いてたけど。


とんでもない尾根。どうすんだこれ?

飯豊連峰は、日本海から直接吹き付ける、強烈な湿雪が生み出す豪雪が、極端な地形を生み出したと推測されています。
冬の雪と春先の水量が大変多いので、風が吹き付ける日本海側は割と雪の量が少ないのでなだらか。
そして尾根を越えた太平洋側は、とんでもない積雪で削られて、抉られ、岩峰もシャープです

この時点で急登3時間。あ~あ。登山屋さんの悪夢のような光景。
なんだい。この先は峰々が延々続いて、その先に見える尖峯(宝珠山)は、途中の山だよ。


厳しいにしてもねぇ。

とにかく峰のてっぺんに岩峰が並んでいるから、端から順番に避けるか越えるかして歩くことになる。
なんでも、このダイグラ尾根は昔は小国町の青年が成人として認められるために、一人で登った峰だそうで。
飯豊山そのものが、山形、福島、新潟の三県に渡って跨がる霊験あらかたな信仰の山で、このダイグラ尾根は修験者も歩いた修行の道だそうです。
だからこんなに逃げ場のないところに、真っすぐの道があるのか。。。


ズリズリだよ。この斜面。

強烈なズリ場(スリップしやすい礫斜面)が次々と現れます。
下は300メートルはある急斜面。トラバースにも大変に神経を使います。
ってことは、小国町の根性なしは、ここから落っこちて行ったわけか。。。。クワバラクワバラ。


雨も降り出した。ヤバいかも。

日中の強烈な日射しも、高層の大気の影響もあり、南の峰から大量の雲が沸き出して。。。僕らのいる峰ではなく、向かいの縦走路に強烈な雷雨が落ちています。
あとで、すれ違った人に聞いたら、石転び沢はとんでもない雨風だったそうで、つくづく運が良かった。


撤退は、恥ではない。

今日はまず、登頂開始前から徒渉など余計に時間を使ってました。しかもルートは通行止めだったから未整備なまま。
天候の悪化。チーム全体の疲労。この先のルートの難易度を考えると、今日はビバークも覚悟しなきゃいけない時間となってきました。
渇水の影響で、この先の山小屋には水がある確証がありません。不確定要素を伴ったまま無理に進行すると、滑落や熱射病。道迷い。本当に遭難の危険が出てきます。
この時点なら、一泊留まって、明日同じ道を戻れば6時間で下山が可能。どうする???隊長??


でも。幸運の女神は努力を見捨てない。

最近の遭難事故の記事を読むと、登山隊が平気で隊を分裂させるんですよね。
僕が大学で山をやっていた時は、疲れた人間の荷物は全員が分担して、とにかく一塊で行動が基本だったんだけど。最近の初秋によく起きる疲労凍死事故のほとんどは、メンバーが登山道上に“てんで”に倒れている。僕みたいに古い教育を受けたものには、考えられない終わり方なんだけどな。。。

って、判断の時間が残り少なくなった頃、奇跡が起きました。
雷雨が周辺の地表を濡らしたので上昇気流も一息つき、みるみる天候が回復したのです。
視界が良好に戻り、雨の不安もなくなった。これなら少々暗くなっても前進できます。


努力が報われるときが来た。

珍しく、メンバーに撮ってもらった僕の後ろ姿。
周囲の草原が黄金に輝いて、綺麗ですね。結局、日暮れ過ぎまで歩いて、真っ暗になってからキャンプ予定地の御西小屋に着きました。


無事に山を越える。

まぁ~小屋番には、もっと早く着くようにと、さんざん言われました。でもね~、無理なもんは、無理だ。
ダイグラ尾根を登ってきたってことが解ると“スゲー!”と絶賛の嵐でした。
僕らGPSを持っていたんで、真っ暗でも充分に歩くことできるし、7月に一回偵察しているから道知ってるし、しかもビバーグできるぐらいのフル装備持って歩いているから無理出来るんですよ。マネしないでくださいね。


美しき東北の山

ま。ここからは普通の山行なので。
遠くに昨晩泊まった御西小屋が見えますね。そしてなんという美しい草原なのでしょう!
東北の山々は、入域する人数が違うせいか、関東の山に比べると、全くと言っていいほどに荒れていません。この美しさはなににも代えられない、東北の先人たちからの遺産だなぁと、しみじみ思うのです。


素晴らしい!

大日岳の裏側です。
この谷間は1000メートル近い標高差があります。こんな美しい景色を観ちゃうから、また山に来てしまうんですよね。


東北の実力です。

僕らが、真夏のダイグラ尾根を越えてきたことが、道々人に伝わっていたらしく、通りがかりに声をかけてもらった。
特に嬉しかったのはここ。ここの写真に写っているのは梅花皮小屋。その右手に、奈落まで落ちているのは東北で最も事故の多い、そのぶん魅力も多い石転び沢。
その梅花皮小屋の小屋番と、どうやって登ったか?途中どんなだったかなんて話の最後に、来年は石転び沢を登りにきたいんだよね。って話したら、是非とも来てください!って言われちゃった。最も危険な沢に招待されたんですよ。嬉しいなぁ。


強風。

こちら。下山前にもう一泊した門内小屋にて、明け方からの風速20メートルを越す強烈な突風に翻弄される僕たちのテント。(見た目と違って、中は快適なんですよ)
古式豊かな三角テントに見えるけど、これが今回の秘密兵器の、インナーを使わずテントのポールは登山ステッキを流用するという、最新鋭のシングルウォールテント、Nemo Meta2です。
充分に居住性が良くて、暖かくて、総重量がたったの1.3キロ。三角テントは風に強いとは聞いていたけど、初使用のいきなりテストで合格でした。


でもこんな日があるから、山に来てしまう。

飯豊の山を含む、世界遺産にもなっている白神山地から続く東北の山々は、古くから信仰の山として大切のされ、地元の有志の手によって整備されているって知ってました?
前回の山行で草刈りをしていた青年に、また道すがら出会いました。
今回は、何で登っているんだい?って聞いたら、どうやら環境省の視察と、地域の山岳ボランティアと、その他大勢が梅花皮小屋に集まって宴会を開くそうで、山で働いている彼は、途中小屋に立ち寄るたびに飲みのみ歩いてきたそうです。どうせ呑むなら、山の方が楽しいでしょ!って、ここまで来るか!
いつもの100リットルのザックには、今日はビールにモモにナシと肴を山ほど背負ってきたそうです。


雲の流れが早い

なんだか、飯豊連峰には遊びにくるたびに、人に話したくなる物語が生まれてきます。
初冬の時期にも、もう一回登りにこようかな?
山も環境も人も、魅力あふれる山行でした。


足漕ぎトイレ。

そしてまた便所かよ!
門内小屋にあった、人力培養槽撹拌式トイレでした。
前に20回。後ろに10回回転させて、微生物に空気を送ってあげます。
どうせ自転車なら、ドロップハンドルのほうがいいな。。。。自分で上げろってか。

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